K氏が差し出した物、それは…
とある有名ホテルの割引き券だった。



「何ですか?これは?」
と戸惑う私。

「割引き券をもらったから、一緒に使わないかなと思って。」と私の前にすーっと手をのばして券を置き、ニヤニヤしながら言うK氏。


まだ今よりずっと純だった(?)私は、それまで男性からそういう誘われ方をされた事がなかった。

当時、ついその前まで学生だったわけで、付き合う男性と言えば、地方から上京して仕送りで暮らす貧乏学生たちだけだったのだから。


はは~ん。これか。奥様が心配するわけだ。と思ったら腹がたってきた。



「いりません、こんな物!馬鹿にしないでください!」と言って、割引き券を突き返し、そのまま店を出たのだった。



注文した食事は口に入らず、お腹ペコペコのままで、出てきた事を少し後悔したが、明日からどんな顔して仕事したらいいんだろうと憂鬱になったのを覚えている。


今より世の中が景気が良く、夢にあふれ、夜の街の風景もキラキラしていた時代の話である。